はやくおわれ。
ただぼんやりと、校長先生が何か喋っているのを遠くで聞いていた。
「面白くない」と思う。
表面的な、ただ綺麗な言葉だけを並べたって誰の心にも届きはしない。
生徒が真面目に聞かない訳を、他人に押し付けてばかりいる。
きっと彼はそれに気付いていないんだろう。
逆に、実体験を交えて話をしてくれる人の話は聞いていて面白い。
そこにあるのは「もし」でも「例えば」でもない、真実だから。
だが、聞かない生徒も生徒だ。
つまらない話だなんて判りきっているんだ。
さっさと終わらせたきゃ真面目に聞いてるフリだけでもすればいいんだ。
先生はそんなこと気にも止めず、体育館の壁にもたれて、居眠りしてるやつまでいる。
はやく終わればいいのに。
もういいから。
さっきから同じことを何回も何回も、聞き飽きたよ。
誰も聞いてないだろ!?
はやく気付け。
でも、いちおう一生懸命かどうかは知らんが、頑張って喋ってるんだ。
聞いてやれ!!
てゆーかお前らそれでも教師か?
・・・イライラする。
あたしは目を瞑った。
周りに誰もいなかったなら、耳も塞いでいたに違いない。
笑顔で、どうでもいい、中身のない話をし続ける校長。
それを無視しておしゃべりしている生徒たち。
注意も何もせず、ただそこにいるだけの先生の群れ。
全てのものに嫌気がさした。
この異常な空間にいることが耐えられない。
吐き気がする。
誰か、・・・誰でもいい。
ここから、あたしを。
あたしが再び目を開けたとき。
異変は起きた。
ステージの脇から。
姿をあらわしたのは・・・
虎 だった。
ゆうに6メートルはあると思われる、銀色の。
あたしは、目を見開いた。
目が、離せなかった。
虎と目が合った。
確かに 虎が あたしを見て 頷いた。
そして。
虎は空に向かって、吠えた。
あたしはその声を知っている。
虎を見つめたまま、ぼんやりと思った。
最初に悲鳴をあげたのは誰だろう。
・・・とにかく、それがパニックの引き金になったのは確かだ。
誰もが我先にと出口へ走った。
誰が転倒しようが、気を失おうが、泣き出そうが、そんなのはお構いなしで。
校長は真っ先に逃げ出していて、生徒を掻き分け掻き分け。
他の先生も同じようなものだったが。
あたしは、そこから一歩も動かなかった。
ただ虎を見据えたまま。
立ち上がる。
虎はステージから飛び降りると、ゆっくりとこちらに向かい。
悲鳴は大きくなり。
ある少数の者達は恐怖からまったく動けず。
そしてまた多くの者達は、逃げるために他人を踏みつけ。
不思議と、怖いとは思わなかった。
綺麗な毛並みが分かるほど、近くに。
銀色の虎は、あたしの前で立ち止まった。
瞳のサファイアが、真っ直ぐに。
あたしを見返して。
口を開こうとして、一瞬ためらった。
何を言うべきか。
・・・そんなものは初めからひとつしかないじゃないか。
「ありがとう。・・・ずっと待ってたよ。」
微笑ってそう言うと、虎はそこに伏せた。
"乗れ"
きっとそういう意味なのだろう。
あたしは、銀の鬣に跨った。
・・・あったかい。
「連れて行って。」
迷いなんか、ある筈がなかった。
虎は立ち上がり、あたしを乗せたまま。
霞がかかったように。
まるで、雲隠れをした月のように。
消えた。
残されたのは、静まり返った体育館と、逃げ遅れた生徒だけだった。
また、真実を見たのも彼らのみ。
あたしはその景色を、空から眺めていた。
何かが、ぷつりと切れて。
あたしの心は穏やかだった。
世界があたしを切り捨てたんじゃない。
あたしが、世界を切り離して。
・・・自由になったんだ。
もう、戻らないよ。
あれが日常だって言うのなら、そんなもの。
あたしは、いらない。
fin. 誰か見つけてくださった方いらっしゃいますかね笑。よろしかったらご一報を。
| 広告 | [PR]冷え対策 花 再就職支援 わけあり商品 | 無料 チャットレディ ブログ blog | |